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乳がん

こんな人に多い病気です

イラスト

 アメリカでは、女性の8人に1人が乳がんになるといわれます。それに比べると、日本は乳がんの少ない国といわれ、現在も3分の1程度です。とはいっても、日本でも乳がんは増加の一途をたどり、1960年には1700人足らずだった乳がん死亡者が、2008年では12,000人程にのぼっています。50年ほどの間に、7倍以上も乳がん死亡者が増加し、欧米に追従しているのです。実際に乳がんにかかる人の数は、年間4万人を越えると見られ、女性のがんの第1位になっています。

 これほど、乳がんが増えた背景には、女性のライフスタイルの変化や食生活の変化などが影響していると考えられています。乳がんは「ホルモン依存性のがん」といわれ、エストロゲンという女性ホルモンががんの発生に深く関わっています。

 エストロゲンは、月経など女性の体で重要な働きをしているホルモンですが、その一方で乳がんを促進する方向に働くのです。

 ところが、現在の豊かな生活は、女性がエストロゲンを分泌する期間を長くしています。豊かになった食生活の影響で、初潮を迎える時期は早くなり、逆に閉経は遅くなっています。また、女性の社会進出も進み、晩婚、高齢出産、さらに少子化、あるいは子供を生まない女性も増えてきました。その結果、妊娠・授乳によるエストロゲンの分泌停止期間も短くなり、結果としてエストロゲンが分泌される期間が長くなっているのです。動物性脂肪の多い食事や高カロリーの食事が、エストロゲンを介して乳がんの危険を高めるという統計的なデータも報告されています。つまり、豊かな現代生活が、乳がんを増やす方向に働いているのです。

 また、最近は日本でも閉経後の乳がんが増加する傾向にあります。閉経になれば、卵巣からのエストロゲンの分泌も止まるのだから、乳がんにはなりにくくなるのではないか、と思う人もいるかもしれません。ところが、閉経後も副腎から分泌されるアンドロゲンという男性ホルモンが、脂肪組織でエストロゲンに変換されています。
 したがって、閉経後は脂肪組織の多い人、つまり肥満した女性に乳がんの危険が高いと指摘されています。もちろん、肥満だけが原因というわけではありませんが、少なくとも肥満は避けた方がいいと考えられています。

 しかし、幸い乳がんは割合早い段階から自分で発見することが可能で、集団検診にも乳がん検診が用意されています。そのおかげで、早期に発見される人が多く、がんの中では治る率が高いがんに入っています。30代に入ったら、乳がんの危険年齢です。自己検診と、定期的な専門家による検診を受けて早期発見の機会を失わないようにしましょう。また、母親や姉妹に乳がんの人がいれば、いっそう注意をして検診を受けたいものです。

乳がんの症状

 乳房には、お乳を産生して運ぶ乳管という管が放射線状に走っています。乳がんの大部分は、この乳管(乳管上皮)から発生します。

 がんは、早期には症状に乏しく、がん特有の症状がないのがふつうです。そのため、発見が遅れることにもなりやすいのですが、乳がんの場合は体の表面に近いので、外から触れたり、形の変化などから、がんを捕らえることができるのが、大きな特徴です。

 まず、乳がんは5ミリから1センチぐらいの大きさになると、自分で注意して触るとシコリがあることがわかります。シコリはむしろ、乳腺症などがんではない場合の方が多いのですが、痛みのないシコリは乳がんの特徴のひとつ。シコリを見つけたら、病院で検査を受けるべきです。さらに、乳がんが乳房の皮膚近くに達すると、エクボのようなくぼみやひきつれができたりします。

 こうした乳房の変化をとらえるために、ぜひ実行したいのが自己検診です。  女性の場合、生理周期にともなって乳房の状態が変化します。そこで、月経が終了して1週間後ぐらいを目安に、自分の乳房をチェックする習慣を付けましょう。閉経後は、たとえば自分の誕生日の日付けに合わせるなど月に一度チェック日を決めておきます。こうして、自分の乳房のふだんの状態を知っておくと、異常があった時にすぐにわかるのです。

 自己触診は、目で乳房の状態を観察することと、手で触れて乳房や脇の下のシコリの有無をみるのが基本です。鏡に向かって立ち、両手を下げた状態と上げた状態で、乳房の状態をチェックします。具体的には、

  ・乳首が左右どちらかに引っ張られたり、乳首の陥没やただれがないか。
  ・乳房に、エクボのようなくぼみやひきつれがないか。
  ・乳首を軽くつまんで、血液や分泌液が出ないか

といった点に注意します。さらに、乳房を手の指の腹で触り、シコリの有無をチェックします。指をそろえて、指の腹全体で乳房全体を円を描くように触ります。乳房の内側と外側をていねいにさすってみましょう。腕を下げたポーズと腕を上げたポーズで左右両方の乳房をチェックします。
 ※とくにお風呂に入った際、石けんなどをつけてしらべるとよくわかります。

乳房のシコリの有無、さらに脇の下にグリグリ(リンパ節の腫れ)がないかどうかもチェックします。

 慣れてくると、小さなシコリでもわかるようになります。乳腺炎や乳腺症など、乳がんと同じようなシコリを作る病気もありますが、素人判断は禁物です。また、専門家によって自己触診では見つからないようながんが発見されることもありますから、定期検診を忘れずに受けましょう。

乳がんの検査

乳がんは乳腺外科、あるいは外科で専門的に扱う場合がほとんどです。

 検査は、視診と触診、さらにマンモグラフィが中心ですが、超音波検査(エコー)もよく利用されています。

マンモグラフィ

 乳房用のレントゲン検査で、早期乳がんの発見率を向上させた立役者といってもいいでしょう。乳房全体をプラスチックの板などではさみ、左右上下方向からレントゲン写真をとります。乳房のシコリだけではなく、石灰化像といって、シコリとして感じられないような小さながんの変化も捕らえることができます。この段階で発見できれば、乳がんもごく早期であることがほとんどです。それによって、乳房を残したままがんを治療することも可能になるのです。

 残念ながら、まだ日本では乳がん検診にアメリカほどマンモグラフィが普及していません。検診は、触診や視診だけではなく、マンモグラフィの検査が含まれているかどうかを確認した方が安心です。

超音波検査

 超音波を発する端子を乳房にあてて、その跳ね返りを画像にするものです。痛みなどはなく、患者にとっても受けやすい検査です。超音波検査でも、自分ではわからないような小さな乳がんを発見することが可能です。

 さらに、シコリや石灰化像などがんが疑われる兆候が発見された場合には、良性かがんかを判断する検査が行われます。従来、穿刺吸引細胞診、針生検(コア針生検)や切開生検が中心に行われていましたが、最近マンモトーム生検という検査法が登場し、注目されています。

穿刺吸引細胞診

 注射針をシコリに刺して一部の細胞を吸引してとり、顕微鏡で細胞の形などを調べる検査です。患者さんの体への負担が少ないのが利点ですが、とくにシコリに触れないような小さながんなどは、この方法では診断できないことも少なくありません。
針生検
 少し太めの針(コア針)で局所麻酔をして、組織を取り出して調べる検査です。患者さんの体への負担が少ないのが利点ですが、病変が小さい場合は、何度も刺す必要があったり、場合によっては、診断がつかないこともあります。

切開生検

 乳房にメスで切開を入れ、がんと思われる部位の組織を一部とってきて、顕微鏡で調べる検査です。穿刺吸引細胞診や針生検で、確定診断ができない合に行われてきましたが、外科手術になるので、患者さんの負担が大きいのが欠点です 。

マンモトーム生検

 乳房にメスで切開を入れ、がんと思われる部位の組織を一部とってきて、顕微鏡で調べる検査です。穿刺吸引細胞診や針生検で、確定診断ができない合に行われてきましたが、外科手術になるので、患者さんの負担が大きいのが欠点です 。

センチネルリンパ筋生検

最近では手術前にがんの転移の有無をしらべるセンチネルリンパ筋生検が行われています。これによってその後の治療法もかなり確実に治すことができます。