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更年期障害

こんな人に多い病気です

 更年期障害という言葉はよく知られていますが、誤解も多いようです。たとえば更年期は閉経後のことと思っている人が多いのではないでしょうか。
 しかし、これは更年期の後半。更年期とは、女性ホルモンを分泌する卵巣の働きが衰えて停止し、女性ホルモンが欠乏した状態で体が安定するまでの時期を指します。具体的には、閉経をはさんでその前後10年ぐらいの期間を指しています。今、日本女性の平均的な閉経年齢は、51歳ぐらいですから、40代半ばから50代半ばまでの期間が、更年期にあたるわけです。
 ただし、これには個人差も大きく、人によっては30代後半から卵巣の機能が衰えはじめ、更年期障害のような症状になる人もいます。これは、ある意味で若いころの生活のツケと言えるところもあります。若いころに無理なダイエットを繰り返したり、不規則な生活や食事を続けてきた、しょっちゅう徹夜で朝食は食べたことがない、といった生活をしていると、ホルモンバランスにも響いてくるのです。
 また、更年期を迎えればだれでも更年期障害に悩まされるわけではありません。ほとんど気にならなかったという人もいれば、寝込むほど調子が悪く、日常生活も満足にできない人もいます。この差は、どこにあるのでしょうか。  ホルモンバランスの乱れが大きな要素ではありますが、その人の生き方や考え方など心の問題や置かれた環境などが大きく影響すると言われています。たとえば家庭内に問題があったり、仕事上のストレスが大きい、離婚など心の負担になる問題があると、更年期障害の症状もよりひどく感じられるようになります。
 また、この時期は人生のうえでもいろいろな転機が訪れる年齢です。夫の定年退職、子どもの自立や結婚。それまでの生き方が大きく変化せざるを得ない時期でもあります。また、ちょっとしたことで体力の衰えを感じることも多くなります。あるいは、親の病気や介護という問題が重なって来る場合もあるでしょう。こうしたさまざまな要因に更年期が重なってくると、精神的なストレスはますます大きくなります。更年期にありがちなうつ症状などには、こうしたストレスや環境も大きくからんでいると思われます。
 こういう環境をどうとらえるかという性格的な問題も大きく影響します。更年期といっても、まだその先の人生は長いのです。更年期は、それまで背負っていた荷物をひとつ降ろして、身軽になれる時期でもあるのです。さあ、これから人生の後半をおおいに楽しむぞ、というぐらいの意気込みで迎えたいもの。完璧主義で周囲にも自分にも厳しい、神経質でちょっとしたことでもクヨクヨといつまでもひきずってしまう、依存心が強くいつもだれかに頼って生きてきた人などに、とくに更年期症状が出やすいという報告もあります。
 今は、ホルモン欠乏による症状は、薬でかなりコントールすることができます。積極的に医療も利用して前向きに生きていく姿勢を大切にしましょう。
 更年期の過ごし方は、その時期の障害だけではなく、その次に訪れる老年期の健康にも大きく影響します。更年期を過ぎると、女性には骨粗鬆症や脂質異常症(高脂血症)などの病気が現れやすくなります。こうした病気を防ぎ、いかに老年期を健康に過ごすか、という意味でも更年期の過ごし方が非常に大切なのです。

なぜ更年期が起こるのでしょうか

 基本的には、エストロゲンやプロゲステロンなどの女性ホルモンが、激減することが引き金になります。
 思春期の女性の卵巣には、数十万個の卵胞があります。しかし、40歳前後を境にその数は急激に減少し、50歳になると数千にまで減少するといわれています。その減少とともに、卵巣の機能も衰えてきます。
 それまで卵巣から分泌されていたエストロゲンやプロゲステロンの量が徐々に減少してくるのです。これだけでも、体のホルモン環境は変化するわけです。さらに卵巣からのホルモン分泌を促すホルモンのほうにも変化が起こります。卵巣の機能は、脳の視床下部によってコントロールされています。ここからの指令を受けて脳下垂体からは、性腺刺激ホルモンが分泌されています。ところが、いくら指示を出しても女性ホルモンが卵巣から十分に分泌されないので、どんどん性腺刺激ホルモンが分泌され、さらにホルモン環境がアンバランスになっていくのです。
 とくに脳の視床下部には、ホルモンをコントロールする中枢だけではなく、情動や自律神経の働きを司る中枢が集まっています。そのため、女性ホルモンのバランスが乱れると、自律神経の働きや情動にまで影響が及び、さまざまな症状が嵐のように襲ってくるのです。

こんな症状があらわれます

 更年期の兆候は、まず月経の乱れに現れます。それまで、規則正しく起こっていた月経が、最初は短い周期で訪れるようになります。減少したエストロゲンをもっと分泌しようと、脳下垂体から性腺刺激ホルモンがどんどん分泌されるのが原因です。人によっては、月に2回も月経がくることがありますが、月経血そのものの量は少なくなります。
 この時期を過ぎると、月経周期は全く乱れ、間隔が短くなったり長くなったり、月経がダラダラ続いたり、短期間で終わるなどさまざまな変化が起こります。そして、やがて月経の周期が長くなっていき、閉経を迎えます。一般的には1年以上月経がなければ、閉経と考えられます。
 そして、月経が乱れはじめたころから現れるのが更年期障害です。更年期障害は、非常に多彩なのが特徴です。自律神経の働きが乱れて起こる典型的な症状が「ホット・フラッシュ」、いわゆるのぼせと発汗です。気温と関係なく突然上半身がカーッと暑くなり、発汗します。ときには、動悸やめまい、脈の乱れを伴うこともあります。
 起こる回数は人さまざまで、一日数回起こるという人から、何日かに一度という人もいます。手足の冷えや耳鳴りなども多い症状です。
 さらに、頭痛、肩こり、腰痛、疲労倦怠感、トイレが近い、腟や尿道がヒリヒリする、性交痛なども多い症状です。頻尿や性交時の痛みは訴えにくいものですが、実際はかなりの人が悩んでいるといわれます。また、こうした症状がとくに強く現れる人もいます。恥ずかしいことではないので、きちんと医師に相談してください。薬で解消できる問題が多いのです。
 また、イライラしたり何でもクヨクヨ考え込んでしまう、気分が落ち込んでうつうつとするといった精神症状も更年期に現れやすい症状です。

こんな治療法があります

 更年期障害の対策は、おもに3つの方法があります。ひとつは、食事や運動、何かを始めて気持ちに張りをもつなどして自力で克服していく方法。そして、ホルモン補充療法と漢方治療です。これに、症状に合わせて睡眠薬や抗うつ薬などを組み合わせていきます。どの方法を選ぶかは、自分自身の問題として考えましょう。

漢方薬

 昔から、「血の道症」などという言葉があるとおり、更年期障害は漢方薬がもっとも得意としている領域です。
 漢方の場合は、その人の「証」を診て適切な漢方薬が選ばれます。証というのは、その人の体質や症状の現れ方などから判断されるもので、状態によっても変化します。
 一般的には、血液のとどこおりを改善する漢方薬がよく使われます。たとえばやせていて日ごろからあまり体力がなく手足が冷える人には当帰芍薬散、やはりあまり体力がなくて冷えやのぼせがある人には加味逍遥散、わりあい体力が充実していて、のぼせや肩こりがある人には桂枝ぶく苓丸、体力があり冷えやのぼせの症状が強い、動悸やめまいも伴う場合には女神散などが使われます。
 ただし、漢方薬は証に合うかどうかで効果は全く違ってきます。また、漢方は2週間ほど使ってみて効果が合わなければ処方を変える、目的の症状ではないところで効果が出てくればさらに続けてみるなど独特の使い方をします。漢方薬は、ひとつの症状を目的に治療するというより、全体に体をいい方向にもっていって、さまざまな症状を治すのが基本的な考え方です。
 幸い、婦人科領域、とくに更年期障害に熱心に取り組んでいる医師の中には、漢方に詳しかったり、その効果を認めている人も多いので、相談してみるようにしましょう。実際には、症状の現れ方やホルモン補充療法で効果のない症状などに、両者を組み合わせて使うことが多いようです。

ホルモン補充療法

 失われた女性ホルモンを外から補充する方法です。かつて、ホルモン補充療法によって乳がんや子宮体がんが増加することがわかり、今でも日本では敬遠する人が少なくないようです。しかし、現在使われているホルモン剤は、こうした副作用がないようにエストロゲンにプロゲステロンを加えてあります。そのため、むしろ体がんの心配はないといわれています。昔のホルモン剤とは、全く違うことを覚えておきましょう。
 さて、ホルモン補充療法には飲み薬と貼り薬、ぬり薬などがあります。飲み薬は、使い方に3つの方法があります。
 ひとつは、周期投与法です。エストロゲンを毎日服用し、月の後半に12~14日だけプロゲステロンをエストロゲンと一緒に服用します。月経も再開してしまうので、閉経後まだ間もなく、出血があってもかまわないという人によく使われます。
 もうひとつは、エストロゲンとプロゲステロンを両方毎日飲む方法です。出血はあってもだんだん減ってきます。3つ目は、エストリオールというエストロゲンの一種を服用する方法です。このホルモン剤は作用が弱いので単独で使っても子宮体がんなどを起こす心配はありません。60歳を過ぎてからホルモン補充療法を始めたいという人などにも使われます。
 ホルモン補充療法の効果は、すでにいろいろな研究で明らかにされています。それによると、とくにほてりやのぼせ、性交痛などの症状に対してはかなり早くから効果が現れます。早い人では、服用後2~3日で効果が現れ、1カ月もすると元の元気なころと全く変わらなくなります。ただし、不眠や不安、イライラなどの精神症状には、もう少し効果が落ちるといわれています。
 ホルモン補充療法は、更年期障害の治療ならば数カ月から1~2年服用すれば十分とされています。苦しい時期を薬で乗り越え、ゆっくりと閉経後の状態に着地するというのが基本的な考え方です。
 また、ホルモン補充療法は更年期障害だけではなく、閉経後に増える骨粗鬆症や脂質異常症(高脂血症)、動脈硬化などの予防にも大きな効果があることがわかっています。こうした目的で使う場合は、もっと長くホルモン補充療法を続ける必要があります。以前、大きな副作用とされた子宮体がんに関しては、現在のホルモン薬はむしろ発生率を低下させることも判明しています。
 ホルモン補充療法は血液検査によってエストロゲンの濃度が低下し、性腺刺激ホルモンの量が増えている人、つまりふつうの更年期の人が対象です。しかし、肝臓に障害のある人や乳がんや子宮がんの経験がある人、脳梗塞など血栓症の既往がある人には使えないので、この点はよく医師と相談してください。

心のケア

 精神的な問題に関しては、ホルモン補充療法や漢方療法もある程度効果 があります。また、最近はSSRIと呼ばれる副作用が少なくて使いやすい抗うつ薬なども出ているので、こうした薬を使うのもひとつの手です。
 カウンセリングを受けることも効果がありますから、一人で悩まずにまずだれかに相談することから始めましょう。日常生活でも、友人を作ったり、サークル活動に参加するなど生き生きと暮らすことも大切です。また、更年期障害は家族の理解やサポートも重要です。できれば、家族にも更年期障害について理解してもらう機会を作りたいものです。
 スポーツも体を活性化するだけではなく、心を元気にする意味でも大変効果的です。外を歩くだけでも晴々した気持ちになるものです。要はどんなスポーツでもやり続けることが大切です。こうした毎日の積み重ねが、生き生きとした老年期の生活への準備にもなるのです。

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