膀胱炎
女性が膀胱炎になりやすい理由
トイレが異常に近い、排尿時に痛みがあるなど、膀胱炎の症状は排尿に関するものだけに、かなり不快なものです。そのため、泌尿器科を受診する女性の病気で、一番多いのが膀胱炎。同じような症状に悩んでいる女性はかなり多いのです。
女性に膀胱炎が多いのは、女性の体の構造と深く関係すると言われています。膀胱炎にも慢性と急性などいくつかのタイプがありますが、一番多いのは細菌の感染から起こる急性膀胱炎です。原因になるのは、大腸菌が圧倒的に多く、この他腸球菌やブドウ球菌などごくありふれた細菌がほとんどです。こうした細菌が尿の出口(尿道口)から侵入して膀胱に入り、炎症を起こすのです。
女性の場合、尿道が男性に比べて短く直線的なので、膀胱に細菌が侵入しやすいこと、また肛門と尿道口が近いことも、膀胱炎になりやすい原因になっています。ちなみに、男性の尿道は平均15~17センチありますが、女性の場合はわずか3~5センチぐらいしかありません。
膀胱には感染を防御する力も備わっているので、多少の菌が侵入した程度では、そう簡単には感染を起こさないようになっています。しかし、疲れがたまったり、カゼをひいたり、寝不足が続いりなどで、一時的に抵抗力が落ちると膀胱炎にもなりやすくなるのです。
20代から30代の女性は、一般的には体力もあり病気にもなりにくいのですが、膀胱炎はこうした若い女性にも多発しています。ひとつには、性行為からも細菌感染が起こるためです。また、女性は出勤や登校などで忙しい朝の時間帯は、家族にトイレを譲ったり、外出先ではついトイレを我慢してしまう傾向があります。こうした我慢も、膀胱の中で菌を繁殖させ、膀胱炎を起こす原因になるのです。
こんな症状があります
急性の膀胱炎は、トイレが異常に近くなる(頻尿)、排尿時の痛み、尿の濁りが3大症状です。加えて、排尿後も尿が残っているようでスッキリしない(残尿感)感じがあったり、時には血尿が出ることもあります。
尿道口から膀胱に侵入した細菌は、膀胱の壁(粘膜)に炎症を起こします。ひどくなると、膀胱全体が真っ赤になるほど激しい炎症を起こし、出血することもあります。この出血が血尿の原因になるわけです。尿の濁りは、肉眼ではあまりよくわかりませんが、尿の中に白血球などが混じるためです。
排尿時の痛みは、膀胱の粘膜が炎症のために刺激されることが原因です。多くの場合は、排尿が終わる時にツンとした焼けつくような、あるいは突き上げられるような痛みがあります。これは、膀胱が空になった時に、粘膜の炎症を起こした部分がくっついて刺激されるためのようです。また、炎症が膀胱から尿道全体に及ぶようになると、排尿を始める時にも痛みが出ます。こうした排尿時の痛みはかなり辛いものです。
トイレが近くなったり、排尿後もスッキリしないというのも、炎症のためです。ふつうは、膀胱に100~150ミリリットルほど尿が溜まると、膀胱の壁が伸びてその刺激で尿意、つまりトイレに行きたいと感じます。ところが、膀胱炎になると10~20ミリリットルなどごくわずかしか尿が溜まっていないのに、炎症による刺激でトイレに行きたくなるのです。そのため、実際にトイレで排尿しても出る尿の量は少ないことが多いのです。そして、排尿が終わっても炎症による刺激は続いているので、なにかスッキリしないという残尿感や下腹部がモヤモヤするような感覚があるのです。
こんな症状が出ることも
一般的な膀胱炎の症状は、上のとおりです。しかし、時には切迫性尿失禁という症状を起こすことも珍しくありません。これは、尿意を感じてもトイレに間に合わない、あるいはトイレに何とか間に合っても、ドアを占めたとたん、下着を下ろしている間に漏れてしまうといった症状です。本来ならば、排尿の準備が整って脳から指令が出て初めて膀胱が収縮して尿が出るのですが、切迫性尿失禁の場合は、脳の指令に関係なく勝手に膀胱が収縮して、尿が出てしまうのです。
これも、女性には辛い症状です。炎症などによって膀胱が過敏になることも、切迫性尿失禁の原因のひとつと言われています。(尿失禁の項参照)
また、急性膀胱炎もひどくなると、細菌が膀胱から尿管を伝わって上にあがり、腎盂腎炎を起こすことがあります。膀胱炎では熱は出ませんが、腎盂腎炎になると38度以上の熱が出て、腰痛や背中の痛みが起こるのが大きな特徴です。腎盂腎炎は、炎症が腎臓の実質にまで及んでいるので、膀胱炎より症状は重いといえます。これにも抗生物質などの薬がよく効きますが、治療は入院して行われることが多くなります。
治療と日常生活の注意
膀胱炎には、細菌を殺す抗生物質や抗菌剤が使われます。早い人は薬を飲んで1日、ふつう2~3日で痛みやトイレが近いといった症状はよくなります。ただ、症状はよくなっても細菌が生き残っていることがあるので、膀胱炎の程度や年齢、持病などによって3日から1週間ぐらいは薬の服用を続けるのが基本です。
それと同時に、膀胱炎の治療、そして予防にも非常に大切なのが日常生活の注意です。次のような点に注意をしましょう。
治療中は刺激物やアルコールは避ける
アルコールや刺激物は、炎症を悪化させるので、膀胱炎の治療中は避けたいもの。
治療中は、セックスも避ける
セックスは細菌感染の原因ともなるので、治療の間は避けましょう。
ふだんから水分は多めにとる。

膀胱炎の人は、排尿時の痛みが辛いので、つい水分の取り方を控えてしまいがちです。しかし、尿がたくさん膀胱にたまるほど痛みもやわらぎます。水分を控えるほど痛みは強くなるのです。また、ふだんから尿をたくさん出すことは、菌を洗い流して膀胱炎を予防するためにも大切な心掛けです。一日1.5リットルぐらいの水分を補給するのを目安にしましょう。
トイレは我慢しない
トイレに行きたくなったら、できるだけ我慢しないようにしましょう。それが、膀胱での雑菌の繁殖を防ぐことになるのです。
疲れをためない
風邪をひいたり、過労、睡眠不足などがあると膀胱炎を起こしやすくなります。適度の休養を常に心がけましょう。
局所の清潔
とくに月経時やセックスの前後は、外陰部をきれいに洗って清潔にしましょう。また、排便後、後ろから前に向かって局所を拭くと、尿道に細菌感染が起こりやすいので、膀胱炎になりやすい人は前から後ろにむかって拭くのもいい方法です。
こうした治療や日常生活の注意で、膀胱炎はほとんどが治ります。とくに安静にする必要はなく、疲れがたまっていなければスポーツをしたり、仕事もとくに制限はありません。
しかし、それでも治らない場合は、何か別の病気が潜んでいる可能性もあります。膀胱がんや尿路結石、糖尿病による免疫力の低下などが原因で起きている膀胱炎は、まず原因になっている病気を治す必要があります。あるいは性感染症が膀胱炎症状を起こしている場合もあります。そのためにも、きちんと病院で検査を受ける必要があるのです。
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