中絶(人工妊娠中絶)~からだと心のケアをしっかりと~
中絶を選択する前に

中絶は、女性のからだと心にさまざまな影響をもたらします。やむをえない選択であっても、中絶手術の内容やリスクについて知っておきましょう。また中絶をくり返すと、将来の妊娠にも影響することがあります。パートナーともよく話し合い、避妊の知識をしっかり身につけておくことも大切です。
中絶の理由は
法律(「母体保護法」)で中絶が認められているのは、次のケースです。
1.母体の健康上の理由、あるいは経済上の理由がある場合。
2.レイプ被害などによる妊娠の場合。
中絶を選択するなら

中絶手術を受けられるのは、妊娠22週未満(21週6日)までです。妊娠初期(12週未満)と、それ以降とでは手術方法が異なり、母体に与える影響にも違いがあります。もし中絶を選択するなら、早く決断するほうが負担は少なくなります。
月経が遅れ、「妊娠かな」と思ったときは、すでに妊娠4週~7週になっているケースがほとんどです。(市販の妊娠判定薬では、子宮外妊娠などを見逃す場合があるので、かならず病院で再確認してください)。
中絶はどこで
中絶手術が認められているのは、各都道府県の医師会が指定する「母体保護法指定医」です。病院を選ぶときには「指定医」であることを確認し、また手術前後の通院に備えて、できるだけ通いやすい場所にしましょう。中絶当日には、麻酔の影響などでからだがふらつくこともありえます。付き添いの人がいない場合には、タクシーで帰宅しやすい距離のほうが便利です。
中絶の費用は
中絶手術には保険が適用されません。病院によって違いがありますが、妊娠初期の場合で10万円前後が目安となります。妊娠中期で入院が必要となる場合は、入院費その他について事前に病院に確認してください。
中絶に必要な準備は
中絶手術を受けるには、原則として本人(あなた)とパートナー(子供の父親)の同意書(署名・捺印)が必要です。なんらかの理由でパートナーの意志確認ができない場合(死亡、不明など)には、本人の同意だけでもかまいません。
中絶手術の当日には、必要書類のほか、生理用ショーツとナプキンを用意します。入院の用意(パジャマ、洗面用具など)が必要なこともあります。麻酔をかけたときに嘔吐することがあるため、手術の前10時間ぐらいから水をふくめて飲食はいっさいできません。また診察のさまたげになるので、化粧やアクセサリーもしてはいけません。服装はスカートなど、脱ぎ着のしやすいものにします。不明の点は、病院に確認してください。
中絶手術とは
◎妊娠初期(12週未満)…「掻爬法(そうはほう)」または「吸引法」でおこなわれます。子宮口をあらかじめ開いた上で、キュレットというスプーン状の器具や鉗子で胎児と胎盤を除去、または吸引する方法です。通常は10分から15分程度の手術で済み、痛みや出血も少ないので、体調などに問題がなければその日のうちに帰宅できます。
◎妊娠中期(12週~22週未満)…あらかじめ子宮口を開いたあと、子宮収縮剤で人工的に陣痛を起こし、流産させる方法がとられます。個人差はありますが、からだに負担がかかるため、通常は数日の入院が必要です。また中絶後は役所に死産届を提出し、胎児の埋葬許可証をもらう必要があります。
中絶後の経過について
中絶後の数日間~10日間程度は、少量の出血や痛みがみられます(個人差はあります)。感染症を防ぐため、病院からもらった薬をかならず飲み、ナプキンをこまめに取り替えましょう。出血があるときの入浴はシャワーだけにし、外陰部を清潔に保ってください。
ホルモンバランスがくずれ、めまいや頭痛などを起こすこともあります。からだの回復を第一に考え、数日間は仕事や学校を休んで安静にしましょう。術後の経過確認のため、1週間後くらいに同じ病院で診察を受けてください。セックスやアルコールは、少なくとも出血が止まるまでは控えたほうが安全です。
経過が順調ならば、術後4週~6週程度で次の月経がきます。
中絶の影響は
◎からだへの影響…中絶によってホルモンバランスが乱れ、月経不順や無月経などの月経異常が起こることがあります。
また掻爬や吸引は手探りでおこなうため、胎盤の一部が残ったりまれにですが子宮を傷つけることも起こりえます。子宮や卵管が感染症などで炎症を起こすと、不妊症や子宮外妊娠の原因となることがあります。さらに子宮口を人工的に広げるため、流産や早産をしやすくなることもあります。妊娠中期の中絶では、子宮収縮剤の影響で子宮破裂を起こすこともあります。
以上のようなケースは少数ですが、リスクとして知っておいてください。
◎心への影響…中絶した子供への罪悪感や後悔の気持ちが、ストレスとなって長期間残る女性は少なくありません。また妊娠を知ってから中絶を選択するまでの期間に、パートナーとの気持ちの行き違いなどなら、男性不信におちいる女性もいます。こうした心の負担を積み重ねないためにも、妊娠を望まない場合には避妊をしっかりおこない、中絶をくり返さないようにしましょう。