「乳がん」を自分でみつける
乳がんは、自分で発見することのできる唯一のがんです。実際、病院で乳がんと診断された女性の約90%は、自分で「しこり」を発見して受診した人なのです。しかも、早期発見できれば、治癒率はほぼ100%。乳がんの若年齢化が進んでいる現在、自分にどの程度のリスクがあるのかを知って、遅くとも30歳になったら自己触診を始めましょう。
正しい「乳がんの自己検診法」
日ごろから自分の乳房を観察し、触れることで、乳がんを発見することができます。でも間違えやすい点も多いので、まず正しいチェック方法を身に付けてください。
見てチェック(視診)
◎鏡の前に立ち、自分の乳房の形、乳頭の向きなどを確認します。とくに乳頭にただれがないか、左右の位 置に違いがないか、陥没がないかといった点をチェックします。
◎乳房の表面に、小さなくぼみやしわ、はれがないかどうかをチェックします。乳がんのもっともできやすい場所は、乳頭の上方からわきの下にかけてのあいだですが、乳頭の内側や下方にできることもありますし、上方の鎖骨とのあいだにできることもあるので、乳房の周辺をじっくり観察しましょう。
◎次に両手を高く上げます。このとき、乳房のどこかにかすかな「ひきつれ」を感じることがあれば、その位 置をチェックします。腕を上げた姿勢のまま、少しからだをひねったりして、同様にひきつれを確認します。ひきつれ感は、ブラジャーをしないで歩いているとき、なんとなく乳房のあたりに軽い違和感をおぼえて、わかることもあります。
触ってチェック(触診)
◎まず乳頭を指でつまみ、根元付近を少ししぼります。このとき血の混じった茶色の分泌液が出ないかどうかチェックします。
◎次に、指の腹(人さし指・中指・薬指)で乳房の表面全体を軽くなで、しこりがないかどうかをチェックします。しこりがあると、かすかに盛り上がった感じや硬い感じが、指先に伝わってきます。乳がんのしこりは硬めで、表面 はでこぼこしていて、触れても痛みはありません。
◎見た目でくぼみやしわ、はれのあった個所、ひきつれを感じた個所などは、少していねいに触ってみましょう。でも指に力を入れると、乳腺などをしこりと間違えやすいので、あくまでも表面 を軽くすべらせるようになでます。指がざらつくときはベビーパウダーをつけたり、入浴中なら濡らした石鹸をつけるのもいい方法です。
基本的ななで方
●上下になでる…… 乳房の表面を上から下、下から上となでながら、指の位 置を少しずつずらしていきます。
●渦巻状になでる…… 乳頭を中心に、渦巻状に輪を広げながらなでていきます。
●放射状になでる…… 乳頭から外へと、放射状になでていきます。
いずれの場合も、軽く、ゆっくりとなでます。腕を下ろした姿勢と、上げた姿勢で、左右それぞれをチェックしてみましょう。
◎乳房が大きな人は、あお向けに寝た姿勢でやると、乳房が平たくなってチェックしやすくなります。寝て調べるときは、チェックする側の肩の下にタオルを敷き、腕を上げた姿勢で行います。

しこりを発見したらまず受診
しこりの原因はいろいろ
しこりを発見したからといって、すぐに心配する必要はありません。乳がんのほかにも、乳房にしこりのできる病気(良性の乳腺繊維腺腫、乳腺症、乳腺炎など)は多いからです。こうした病気は、薬や簡単な手術で治療できますし、軽いものなら放っておいてかまわないものもあります。
受診は専門医のいる病院で
しこりを発見したら、まず受診(外科・乳腺外科)して、病名をはっきりさせましょう。受診する際には、できれば乳がんの専門医のいる病院でしっかりした検査を受けるほうが安心です。簡単な検査だけでは、乳がんであることを見逃されることがあり、これがいちばん怖いことだからです。
知っておきたい話
乳がんのしこりは、直径1~2cm程度までを早期といいます。この程度の大きさになるまで、通 常は10年以上かかります。この大きさになってようやく、私たちが自分で発見できるようになります。乳がんはひとつとはかぎらず、乳房にいくつかできることもあります。乳がんだとわかると、自分の何が悪かったのだろうと悩む女性は少なくありませんが、実際には10年以上の長いあいだにさまざまな要因が重なって生じてきたと考えるほうがいいでしょう。
乳がんの危険要因を知っておきましょう
増えつつある乳がん
近年、日本でも乳がんにかかる人が増えています。自分だけはまさか、と思っているでしょうが、がん専門病院の乳腺外科を一度たずねてみると、同年代の女性たちがいかに多く乳がんになっているかが実感できるはずです。
食事の洋風化が主な原因

その原因の第一は、食生活の欧米化。肉をはじめ、マヨネーズやバターなどの動物性脂肪の多い食事が、乳がんになるリスクを高めるといわれています。実際、動物性脂肪の摂取量 の多い国ほど、乳がんの発生率が高いというデータもあります。予防のためには、動物性脂肪を少なめにし、ビタミンA・C・E、βカロチンの多い緑黄色野菜を積極的にとるようにしましょう。
遺伝的要因もリスクを高める
遺伝的要因も重要です。母親や姉妹などの近親者に乳がんの経験者がいる場合、リスクは2倍~4倍になります。これは体質の遺伝や、食生活の傾向が似ていることが原因と考えられています。それだけに近親者に乳がんがみられる女性は、20代後半から自己チェックをしたり、定期検診を受けるようにしたほうがいいでしょう。
肥満もリスクのひとつで、乳がんになりやすいといわれています。若いころから太り気味の人だけでなく、やせていた人が急に太った場合にも要注意です。
どっきりデータ
結婚年齢が早く、子どもの数が多い女性ほど、乳がんになりにくいといわれます。ですから晩婚化、少子化の進む現代は、乳がんになりやすい時代といえるでしょう。それだけ自己チェックが大切な時代ともいえます。年齢別 にみますと、乳がんはかつて50代からの病気といわれていました。しかし最近では30代・40代の発症者も増え、女性のがんのなかでも、乳がんは若年齢化と患者数の増加がもっとも目立っています。