あなたは「アルコール依存状態」になっていませんか
女性たちにいま、アルコール依存症やアルコールが原因の病気が急増しています。どんな人がどんな飲み方をしたら、そうなるのでしょうか。もしかしたら、あなたは「自分はお酒に強い」と思い込んでいませんか。それともあまり飲めないのに、「つき合いで無理して飲んでいる」タイプですか。どちらもとても危険です。自分の適量と上手な飲み方を知って、酒席で楽しく過ごす方法を身につけておきましょう。
女性はアルコールの影響を受けやすい
女性ホルモンとアルコール
女性と男性では、どちらがアルコールに強いのでしょうか。これには個人差がありますが、一般的にいって女性のほうがいろいろな面でアルコールの影響を受けやすいということができます。
たとえば女性ホルモンには、肝臓でのアルコールの分解機能を低下させる働きがあります。ですから月経前など女性ホルモンの分泌が高まる時期には、ふだんよりアルコールに弱い状態になります。そんなときイライラやストレスからアルコールを飲みすぎると、悪酔いしたり、体調をくずしたりしかねません。
女性のなかには、若い頃はあまり飲めなかったのに、30代くらいから飲めるようになったり、強くなる人もいます。これは女性ホルモンが減少し、アルコールの分解能力が相対的に高くなるためです。ただ女性ホルモンが減少すると、骨の老化が起こりやすくなるうえ、アルコールはそれを促進します。ですから飲めるようになったからといって、あまり飲むのはやめたほうがいいでしょう。
女性は肝臓のダメージを受けやすい
最近の若い女性には、脂肪肝が増えています。脂肪肝というのは、中性脂肪が10%以上肝臓に蓄積した状態のこと。ちょっとしたフォアグラ状態ともいえます。
脂肪肝になると、肝臓で処理できない脂肪分が血液中にあふれだします。そして肥満はもちろんのこと、動脈硬化や糖尿病などの原因ともなります。
脂肪肝は、慢性的な食べすぎ飲みすぎによって起こりますが、なかでもアルコールの影響はとても大きいのです。一般に脂肪肝は、日本酒でいえば毎日3合を2~3年以上飲みつづけると、危険性が高くなるとされています。ところが女性の場合には、その半分くらいの期間で脂肪肝を起こす可能性があります。
男性と同じように飲んでいても、影響を受けやすいのは女性だということを忘れないようにしましょう。
妊娠とアルコールの微妙な関係
女性にとって、アルコールをもっとも気をつけたいのは、妊娠中です。アルコールが肝臓で分解されるとき、アセトアルデヒドという有害物質に変わります。これは悪酔いや頭痛、二日酔いの原因ともなるものです。大人の場合にはその程度で済みますが、アセトアルデヒドが母体から胎児へと伝わると、脳や内臓などにさまざまな影響(胎児性アルコール症候群)をもたらす可能性があります。
日本ではまだ胎児性アルコール症候群について、くわしいデータはありません。でも実際には、胎児の知能やからだの発育をさまたげたり、性格にも影響を与えているケース(落ち着きがない、興奮しやすいなど)が少なくないと考えられています。アルコール依存症の母親から生まれた子どもには、しばしば禁断症状がみられることからも、胎児に与える影響は大きいことがわかります。
とりわけ胎児が影響を受けやすいのは、妊娠の初期です。この時期には、少量でもアルコールを飲むべきではありません。ただ初期には、母親自身が妊娠に気がつかないこともあります。ですから妊娠の可能性がある女性は、飲むのをひかえるほうがいいでしょう。
アルコール依存になるのはどんな人?
アルコール依存と性格
アルコールが手放せなくなり、昼間から飲みつづけたり、アルコールが切れると手にふるえがきたり、幻覚を見たりするようになるのが、アルコール依存症です。アルコール依存症になると、病院できちんと治療を受ける必要があります。
実際にアルコール依存症と診断される人は、それほど多くはありません。でも、それに近い状態の人は、けっこうたくさんいます。
たとえば、アルコールを飲まないと食欲が出ない人や眠れない人、アルコールが手元にないとなんとなく不安になる人、昼間でも飲みたくなる人などは、依存症ではなくても、依存状態にあるといえます。こうしたアルコール依存状態の女性たちも増えています。それは女性が、いろいろな面 でストレスをため込みやすいからです。
一般に、アルコール依存になりやすいのは、次のような性格の人だといわれています。
■ 他人のことがいろいろ気になる
■ 自分の意見をはっきりいえない
■ 頑張り屋だが高望みするので満足感が得られない
■ 失敗すると自分を責めて自己嫌悪におちいる
ストレス解消とアルコール
アルコールの効用のひとつに、ストレス解消があります。アルコールを飲むと、脳神経が軽くマヒするため、日頃はいえないこともいえるし、気分もなんとなく良くなります。
でも、ストレスの原因そのものが解決されるわけではないので、ストレスを感じるたびに飲むようになり、依存状態へと進む危険性もあります。家庭の主婦にみられるキッチンドランカーはその典型ですが、最近は働く女性たちも仕事や人間関係のストレスから、知らずにアルコール依存状態になっている人が少なくありません。
一時的な軽いストレスの場合には、アルコールによる解消もいい方法です。しかし、ムシャクシャしてやけ酒をあおるような行為は、逆効果になりがちです。というのも、ストレスを受けつづけているときは、胃や腸、心臓などにも負担がかかっています。そこに大量のアルコールを飲むと、潰瘍を起こしたり、動悸が激しくなったりと、体調をくずす原因になるからです。
さらに酔いが醒めるときには気分が落ち込みやすいため、かえって自己嫌悪におちいることもあります。
どっきりデータ
女性の場合、慢性的にアルコールを飲むようになるきっかけは、次の3つが多いといわれます。
20代前半: 失恋や異性関係のトラブル
30代 : 仕事や人間関係の行き詰まり
30代後半~40代: 夫や姑との冷えた関係、子育てが一段落した空虚感
飲めるタイプと飲めないタイプ
弱いタイプの人が気をつけること

自分がアルコールに強いか弱いかを知っておくことが、なぜ必要なのでしょうか。それはタイプによって、気をつけるべきことが違うからです。
アルコールに弱いタイプの人が、つき合いなどで無理して飲みつづけていると、食道がんや喉頭がんをはじめとした多臓器がん(多重がん)を起こしやすいことが、最近の研究によってわかっています。からだが受け付けないアルコールを無理に飲むことによって、さまざまな臓器の細胞がダメージを受けてしまうからです。
よく、「飲めない人でも、練習すれば飲めるようになる」といわれます。たしかに無理して飲みつづけていると、飲めるようになります。でもそれはアルコールを分解する能力が高くなったわけではありません。アルコールに対するからだの反応が鈍くなっただけで、その後も内臓はダメージを受けつづけているのです。
もし自分が弱いタイプだったら、酒席では早めにウーロン茶などに切りかえ、楽しく過ごすようにしましょう。
どっきりデータ
最近の遺伝子研究によって、日本人の約半数はアルコールに弱いタイプで、また10%はまったく飲めないタイプであることがわかってきました。アルコールは肝臓で分解されると、アセトアルデヒドという有害物質(悪酔いや頭痛、二日酔いの原因物質)になります。そのアセトアルデヒドをさらに分解して無害化する酵素が、日本人をはじめとしたモンゴロイド系の人には少ないのです。そのため飲むと酔いやすく、気分が悪くなったり、泥酔状態になる人が、日本人にはとても多いのです。アルコールに弱いのはけっして恥ずかしいことではなく、遺伝的にそうなっているのだと思い、無理をしないようにしましょう。
強いタイプの人が気をつけること
自分はアルコールに強いと思っている人が、もっともおちいりやすいのが慢性的な飲みすぎです。飲みすぎが肝臓によくないことはよく知られています。肝臓にはアルコールを分解する役割があるため、常に大量のアルコールが入ってくると負担が大きくなり、やがて脂肪肝や肝硬変を起こしてしまいます。
肝臓は「沈黙の臓器」ともいわれ、じっと耐えて黙々と働く臓器です。胃や腸のように、ちょっと食べすぎると痛くなるといったことはありません。ですから肝臓がギブアップしたときには、病状もかなり進行した状態なのです。
それだけにアルコールに強い人でも、日頃から意識的に肝臓をときどき休ませる必要があります。、週に2日は、アルコールを飲まずに肝臓を休ませる、「休肝日」をつくるようにしましょう。
アルコールの影響は、肝臓だけではありません。糖尿病や高血圧症などの生活習慣病、慢性すい炎、肺炎などの感染症、骨や筋肉の老化など、数えきれないほどあります。また酒席は喫煙の場でもあるため、タバコの煙とアルコールの相乗作用で免疫力が低下し、感染症やがんにもかかりやすくなります。
こうした病気になると多くの場合、医師から禁酒を指示され、飲めなくなってしまいます。もしあなたがアルコール大好きという人なら、長くつき合うためにも「ほどほどに飲む心がけ」が大切です。
飲酒量が増えると死亡率も高まる
大量のアルコールを飲みつづけていると、からだの老化が早まり、寿命そのものが短くなることを知っていますか。
飲酒量を横軸に、死亡率を縦軸にしてグラフをつくると、まったく飲まない状態よりも、少し飲むほうが死亡率は低くなります。ところが、飲む量がある限度を超えると、急速に死亡率が高くなります。グラフの形が、英語のJの形になるので、「Jカーブ効果」といわれています。たとえばアルコール依存症の人の平均寿命は、ふつうの人の平均寿命より20年以上も短いのです。
反対に、少量のアルコールを飲む人には長寿が多いといわれます。それは少量のアルコールには、善玉コレステロールを増やし、血液の流れを良くし、動脈硬化や心臓疾患などを予防する効用があるからです。ただし、この場合の少量とは、アルコールに強い人でも1日当たり日本酒なら2合、ビールなら大瓶2本、ワインならグラス2~3杯程度までの量のことです。

びっくりデータ
毎年1万人近い人が、急性アルコール中毒のために救急車で運ばれています。その原因の多くは、いわゆるイッキ飲みか、それに近い飲み方。短時間にアルコールが大量に入ると、血液中のアルコール濃度が急速に高まります。その結果、神経機能がマヒして昏睡状態におちいるのです。空腹時にはとくにアルコールの影響を受けやすいので、かならず何かを食べながらゆっくりしたペースで飲むようにしましょう。日本人の半数はアルコールに弱いタイプなので、ほかの人にイッキ飲みを強いることも絶対にしてはいけません。
上手にアルコールとつきあうには
ビールは太るってほんとう?
ビール腹という言葉があるように、いかにもビールを飲むと太るような感じがします。でもビールそのものは、ほかのアルコール類と比較してそれほどカロリーが高いわけではありません。
問題は、おつまみにあります。ビールのような薄いアルコール類には、食欲を増進させる働きがあります。そのためこってりしたもの、たとえば揚げ物などの脂っこいものをつい食べてしまいがち。それが太る原因なのです。
ビールにかぎらずアルコール類には、栄養分がほとんどありません。ですから飲酒中には、おつまみが大切な栄養源になります。栄養補給の基本は、良質のタンパク質とビタミン、ミネラル。大豆製品(トウフや枝豆など)と野菜類、それにミネラルでは不足しがちな亜鉛分を補給するナッツも。
おつまみには塩辛いものが多いので、塩分を排出してくれるカリウムの多い野菜や果物もしっかりとりましょう。
自分の適量を知っておく
アルコールを楽しむためには、自分の適量(限界)を知っておくことも大切です。適量には個人差がありますが、目安は、気分が悪くなったり、酒席で失言をするほど酔わないこと、また次の日まで残らないこと。自分だけでなく、まわりに迷惑をかけないことも、重要な目安です。前の日のことはおぼえていない、なんていう状態は適量をはるかにオーバーしています。
一般に男性の場合、肝臓がアルコールを処理するには、日本酒1合で約4時間かかります。ビールなら大瓶1本、ワインならグラス2杯程度がほぼ同じレベル。ですから日本酒2合程度なら、ひと晩(8時間)寝れば影響はないことになります。
ただし女性やアルコールに弱い人では、もっと時間がかかります。また女性は前に書いたように、月経やストレスの影響などで酔いやすくなるので、そうした時期にはいつもより少なめに飲むことも大切。
アルコールに弱い人や胃の弱い人は、飲む前にミルクを1杯飲んでおくのもいい方法です。胃壁を保護してくれるだけでなく、アセトアルデヒドの分解を助けてくれるので、悪酔いの予防にもなります。
にこにこデータ
女性のあいだでは、ワインが人気になっています。とくに赤ワインにふくまれるポリフェノールには、動脈硬化や心筋梗塞の予防効果があるとして注目されています。最近はそれだけでなく、からだの酸化を防ぎ、老化予防にも役立つといわれ、女性にとっては嬉しいかぎり。さらに痴呆症の予防効果も確認され、年配の女性にも赤ワインがいいといわれます。ただし、こうした効用はあくまでも「少量」を飲んだときのこと。いくらポリフェノールがいいからといって、飲みすぎは逆効果です。健康的な範囲の量とは、飲める人でも半瓶くらい。ワイン王国のフランスやイタリアにも、肥満や生活習慣病が多いことを忘れずに。