「軽い運動」で健康と若さを継続する
ダイエットには興味あるけど、運動はどうも苦手…多くの女性たちが、そんなふうに思っているのではないでしょうか。運動が大切なことは知っていても、なかなか続けられない…そんな人も少なくないはず。
でも運動って、そんなに大変なことでしょうか。あなたは毎日、立ったり座ったり、歩いたり、何かを持ったりしています。そうした日常生活の動作こそが運動の基本。そこにほんの少しアレンジを加えれば、知らずに運動量がアップし、病気の予防やダイエット、老化防止にも効果があるのです。
運動不足はこんなに怖い
運動不足は、女性に共通のウイークポイントです。日ごろから運動をしている女性は、およそ4人に1人。つまりほとんどの女性が、慢性的な運動不足状態ともいえます。
一見健康そうにみえても、運動不足によるからだの不調をかかえている女性はたくさんいます。運動不足のうえに、カロリー・オーバー(食べすぎ)が加わると、肥満や脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病を引き起こす最大の要因となります。また運動不足は、からだ(肌、骨、内臓、脳など)の老化を早める原因でもあるのです。
とくに20代と30代の女性たちに運動不足の人が多いため、肥満や生活習慣病、あるいは骨粗しょう症などの人が、今後ますます増えていくと予測されています。
どっきり情報
女性の多くがトシを感じるのは、30歳前後から。そのきっかけとなるのが、「疲れがとれないこと」と「プロポーションの変化(くずれ)に気づくこと」。どちらも年齢のせいでしかたないと思われがちですが、じつは運動不足のせいという面が少なくありません。疲れの原因は、乳酸などの疲労物質がたまりやすくなるためで、これには血行不良が関係しています。またプロポーションの変化は、余分な体脂肪(皮下脂肪と内臓脂肪)がつくためです。いずれも運動によって改善できるので、あきらめないことが大切。
「楽な運動」でも健康効果は高い
脂肪の燃焼には軽い運動で良い
健康や若さの維持には、激しい運動は必要ありません。楽な運動、軽い運動でも、十分に効果があります。
運動をするときの主なエネルギー源は、糖と脂肪です。この2つは運動の強度によって、使われる比率が違ってきます。激しい運動では糖が多く使われ、軽い運動だと脂肪が多く使われるのです(ジョギング程度の強さの運動でほぼ50%ずつ)。つまり脂肪を効率よく燃焼させ、肥満や生活習慣病を予防するには、たまに強い運動をするよりも、軽い運動を続けるほうが効果的なのです。
運動は頭もよくする
運動は、脳の働きにも影響を与えます。ウォーキングや散歩といった軽い運動をすると、脳の働きが活性化され、記憶力や判断力、集中力などが向上します(理由については「なっとく情報」をご参照ください)。
さらに骨は、強い刺激を与えるとダメージを受けますが、軽い負荷を与えると骨をつくる細胞が刺激され、カルシウムの生成が促進されて丈夫になっていきます。
日ごろ運動不足の人なら、楽な運動でも十分に効果があることを知っておきましょう。
なっとく情報
歩くと脳の働きがよくなるのは、記憶力に関係するアセチルコリンや集中力を増進させるノルアドレナリンなど、脳の神経伝達物質の分泌が活性化されるためと考えられています。実際に記憶力や判断力のテストをすると、歩く前よりも、歩いている最中からその後にかけてのほうが、成績がアップするという変化がみられます。
またアセチルコリンの減少は、アルツハイマー型痴呆の原因の1つとされているので、これを防ぐ効果もあります。歩くことは、若い世代にとっては仕事や勉強の効率を高め、高齢者にとってはボケ予防にもなるわけです。
運動のメリットはこんなにある
運動のメリットは、とてもたくさんあります。あなたが手にいれたいのは、どれですか。
生活習慣病の予防
適度な運動をすると、血液中のコレステロールや中性脂肪を減少させ、反対に善玉コレステロール(HDL)を増やしてくれます。またインスリンの働きをよくして、血糖値の上昇を抑えてくれます。その結果、高血圧や脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病の予防に効果があるほか、動脈硬化を防ぐので心筋梗塞や脳梗塞など血管系の病気の予防にもつながります。
アンチエイジング(抗加齢)効果

からだの老化は、成長ホルモンの減少をきっかけにして、20代から始まります。でも老化のスピードは人さまざま。適度の運動によって、成長ホルモンの分泌を促進させ、外見(肌など)だけでなく内臓の老化速度を遅らせることができます。
<右図:成長ホルモンの分泌レベルと年齢>
成長ホルモンは20歳頃をピークにして減少に転じ、老化がはじまります。老化の速度は人によって違いますが、適度の運動をすることにより成長ホルモンの減少を抑え、老化を遅らせることができます。
肥満の解消(ダイエット)効果
年齢とともに筋肉が衰え、代わりに脂肪(体脂肪)がついてきます。これがプロポーションの変化や肥満の原因に。有酸素運動をすると、脂肪が燃焼しやすくなります。また筋肉運動は、からだのエネルギー消費量(基礎代謝量)を高め、脂肪のつきにくいからだをつくります。
※有酸素運動とは、酸素を取り入れながらおこなう運動のこと。ウォーキング、水泳、自転車こぎ、エアロビクスなどがあります。ダンベルやバーベルなどを使った筋肉トレーニングを、無酸素運動ともいいます。
ストレス解消(リフレッシュ)効果
運動によってノルアドレナリンやドーパミンなど脳の神経伝達物質の働きがよくなり、精神的にもリフレッシュすることができます。また脳が活性化することで、ボケ予防の効果もあることが知られています。
持久力や疲労回復力の増進効果
運動を続けると心臓や肺、血管などの機能が高まり、からだの隅々まで血液の流れがよくなります。その結果、持久力がついて疲れにくくなると同時に、疲労からの回復も早くなります。
骨や関節を丈夫にし、動作をスムーズにする効果
運動によってカルシウムの生成が促進され、骨や関節が丈夫になります。その結果、女性に多くみられる骨粗しょう症を予防することができます。また、からだのバランスや動きを調節する神経伝達物質のドーパミンが活性化されるので、日常生活の動作がスムーズになります。
こんな軽い運動を始めてみましょう
現代人に運動不足が多いのは、「歩かなくなったこと」と「からだを動かさなくなったこと」が最大の原因。つまり、生活の基本となる動作が不足しているのです。「いざ運動」と気負わなくても、日常生活のなかでできる、自分に合った運動をみつけてみませんか。
運動1 いつでも速足
通勤・通学・買い物は速足で
ウォーキングについての最新研究では、長時間まとめて歩かなくても、10分程度に分けて何度かおこなうことで、同じ効果が得られることがわかってきました。
10分程度の歩行なら、通勤・通学・買い物などで簡単にできます。しかもほとんどの毎日の行動ですから、これを利用しない手はありません。一般にウォーキングでは歩幅を大きくとり、かつ速足で歩くのが原則。でも通勤・通学・買い物などの場合には靴もいろいろなので、無理をせず、まず速足を心がけましょう。
注目される速足のメリット

最近、速足のメリットが注目されています。たとえば血糖値の高い人(糖尿病)でも、歩く速度の速い人ほど死亡率が低く、また心筋梗塞など血管系の病気にもなりにくいという報告があります(アメリカ・ハーバード大学の研究チームによる。読売新聞2003年6月17日付より)。
東京都老人総合研究所による老化予防の長期研究プロジェクトでも、運動と健康との関係を調査したところ、高齢でも歩く速度の速い人ほど長寿で、からだの障害(ケガや病気)も少ないことが報告されています。
これは速足が適度の運動となり、インスリンの分泌がよくなったり、心臓や肺、血管などの機能が向上すること。また、足腰も丈夫になるためと考えられています。速足の習慣を身に付けておけば、自然に健康の維持や老化の防止に役立つのです。
歩くときはいつでも速足・・・これだけの運動なら、できそうな気がしませんか。速足のコツは、「イチ、ニ、イチ、ニ」と意識的に速めのリズムをとりながら歩くこと。ふだんより少し速い程度を心がけ、歩き終わったあとに軽く息がはずむくらいを目安にしましょう。
<上図:歩く速度とからだの障害(ケガや病気)の危険度>
歩く速度の速い人ほど、死亡率や障害の危険度が低く、健康で長生きという傾向がみられます。(65歳以上の高齢者の比較データ。東京都老人総合研究所「サクセスフル・エンジングをめざして」より)
運動2 とにかく階段
階段は効率よい運動の場所
スローピングという運動が注目されているのを知っていますか。スローピングとは、階段や坂道を上り下りすること。平坦な道と比較すると2~3倍もの負荷がかかるので、エネルギー消費量が多くなります。それだけ短時間で効率よく運動できるのが、最大のメリットです。
階段はどこにでもあるので、これも日常的に簡単にできる運動です。駅や建物内ではエレベーターやエスカレーターをできるだけ使わず、とにかく階段を利用すること。会社や出先でも、打ち合わせの移動やトイレへ行くときなど、積極的に階段を利用しない手はありません。
上り下りはゆっくりやること
もちろん自宅の階段でもできますが、傾斜が急な場合は危険なので、運動のために繰り返し上り下りするのはやめましょう。
また階段は急ぐと転倒の危険性もあるので、かならずゆっくり上り下りすること。そのほうが足に負荷がかかるので、運動効率も高まります。とくに高齢者の場合には、手すりのある階段でやってください。各地(地方自治体など)でスローピング教室も開かれていますので、それを利用するのもいいでしょう。
運動3 気軽にステップ
玄関でステップ

毎日何度か通る玄関でも、簡単に運動ができます。玄関の段差を利用するステップ運動です。わずか1段ですが、これを上り下りするだけで、ウォーキングや階段の上り下りにも負けない、かなりの運動量になります。前向きで数十回、後ろ向きで数十回、さらに横向きで数十回というように、自分の体力に応じてメニューを組みましょう。
後ろ向きと横向きのステップは、ちょっときつく感じるかもしれません。でも日ごろ使わない筋肉を使うので、たるんだ足を引きしめるにはぴったり。足への適度の刺激は、骨量を増やし、日常の動作をスムースにするのにも役立ちます。
音楽をかけながら楽しく
室内運動なので、服装や天候を気にせず気軽にできるのもメリット。最初のうちはつまずかないように、靴箱や壁に手を添えてゆっくりやりましょう。また、床(上がりかまち)やタタキ(靴脱ぎ部分)は堅いので、素足でやるとかかとに衝撃を受けます。床には汚れないように新聞紙を敷き、靴(スポーツシューズやウォーキングシューズなど底の厚手のもの)をはいてやると安全で、音も響きません。
慣れてきたら音楽をかけながら、リズミカルにやるのもいいでしょう。簡単な運動なので、やりすぎないように注意し、目安は軽く息がはずむ程度に。
玄関の段差のかわりに、読み終わった雑誌類を10cmほどの高さに積み、ガムテープか紐でしっかり固定してステップ台を作る方法もあります。これなら室内のどこにでも置けるので、たとえばリビングでテレビを見ながらでもステップ運動ができます。ただしマンションでは、ドシンドシンと音が響かないように、床に薄手のクッションやマットなどを敷きましょう。
運動4 すいすい筋力アップ
テレビを見ながら筋力運動を
自宅でテレビを見ているとき、ほとんどの人は手があいているのではないでしょうか。それでついお菓子を食べてしまい、カロリー・オーバーに…。
あいている手を利用して、上半身の筋力アップ運動をしましょう。適当な重さのダンベルがあればそれを利用しますが、なければペットボトルに水を詰めたものでもかまいません。大きなペットボトルなら両手で、小さなものなら片手で持ちます。
ソファや椅子の場合は、腰がぐらつかないように深く座ります。そして膝に置いたダンベル(水入りのペットボトル)を、まず胸元まで上げる運動を十数回。次に頭上に上げる運動を十数回。
床でやる場合は、あお向けに寝た姿勢で、まず胸の上でダンベル(水入りのペットボトル)を上げ下げします。次に、もものあたりにダンベルを置き、これを胸もとまで引き上げる動作を繰り返します。
ゆっくりやるほど効果的
回数は、体力に合わせて自分で決めますが、目安は翌日に筋肉痛が起こらない程度。こんな楽な運動で筋力がつくのかなと思えるくらいでも、続けることで効果が出てきます(最初からやりすぎると、ひじの痛みなどを起こしやすいので注意しましょう)。
9時のニュースを見ながら毎日5分~10分間、というように運動時間を決めておくと、習慣になるので忘れません。10分間程度の筋肉運動で、80kcal~100kcalくらいのエネルギー消費量になります。また筋肉量が増えると、基礎代謝量が増えるので、エネルギーの消費効率もよくなります(「なるほどデータ」をご参照ください)。
いずれの動作も、ゆっくりやるほうが筋力アップにつながります。ペットボトルの場合は、水がもれないようにきちんと栓をして、すべらないようにしっかり握りましょう。
なるほどデータ
私たちのからだは、安静状態のときでも心臓を動かしたり、呼吸したり、筋肉を維持するためにエネルギーを消費しています。これを基礎代謝といいます。それに対して仕事や歩行などで消費するエネルギーを、生活活動代謝といいます。じつは私たちが毎日消費するエネルギーのうち、7割以上を基礎代謝が占めています。とくに筋肉を維持するためのエネルギー消費量は大きいので、筋肉量を増やすと自然にエネルギー消費量も増え、脂肪がつきにくい体質になります。筋力をアップする運動が大切な意味が、そこにあります。
運動5 こまめに家事
家事には適度な運動量がある

家事があまり苦にならない人なら、それを利用する運動も効果的。暑い季節に掃除機をかけると大汗をかくように、家事労働はけっこう運動量が多いからです。
たとえば掃除機がけを15分~20分ほどすると、50~60kcalを消費します。これはウォーキングを10分~15分したのに相当します。風呂掃除や窓拭きだと10分程度で約40kcal。なかなかいい運動量だと思いませんか。家事というとつい手抜きになりがちですが、運動だと考えれば熱心にできるので一挙両得ということも。
脂肪のつきにくいからだに
家事のメリットは、単にエネルギー消費だけではありません。いつもこまめにからだを動かしていると、脂肪が燃焼しやすい状態を維持できるので、体脂肪のつきにくいからだをつくることができます(反対にからだを動かさずにいると、体温も下がって脂肪が燃焼しにくくなります)。
また家事では、からだのさまざまな部分を動かします。そのぶん日常の動作がスムースになり、指先足先など末梢部分の感覚機能も向上します。さらに血液の流れやホルモンの分泌もよくなるので、体調の改善にも効果があります。
運動をするときの注意
大切なのは長く続けること
日本人には生真面目な性格の人が多いせいか、運動を始めるとつい頑張りすぎる傾向がみられます。たとえばスポーツクラブに通っている女性には、会社の帰りなどに「寸暇を惜しんで運動をしなければ」という思いがあって、それがストレスになっていることが多いといわれます。中高年の場合には、張り切りすぎて足や腰などを痛める例もよくあります。
健康や若さを維持するための運動は、頑張ってする必要はありません。大切なことは、楽な運動でいいので「定期的に長く続けること」。忙しいときや風邪を引いたときには、2、3日休んでもかまいません。義務感からではなく、楽しみながらやるのが長く続けるコツです。
からだの内側の変化にも注目したい
体重やウエストサイズなどを定期的に測って、変化を記録しておくのも、運動の楽しみ方の1つです。ただし、体重などの数値が目に見えて減らないと、がっかりして運動をやめてしまう人が少なくありません。
そんなときでも体内では血管や骨が強化され、動脈硬化や骨粗しょう症の予防などに役立っています。血圧や体脂肪を測ったり、年に1度くらいは血糖値や骨密度も計測するなどして、からだの内側の変化にも注目してください。
高血圧や糖尿病などですでに治療を受けている人は、いきなり運動をはじめると危険なこともあるので、かならず医師に相談してから始めましょう。また運動をする前には、全身、腕、足などをゆっくり伸ばす準備運動(ストレッチ)をしておくと、ケガの予防に役立ちます。
なっとく情報
脂肪の燃焼に役立つと注目されているアミノ酸は、もともとスポーツ選手たちが運動効率を高めるために使用していたものです。それだけにアミノ酸飲料などを飲むときは、運動と組み合わせるのが効果的。アミノ酸はふつう飲んでから30分ほどで吸収されるので、そのタイミングに合わせて運動を始めると、脂肪の燃焼効率もより高まります。