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子宮内膜症

疫学 -こんな人に多い病気です。-

 最近、20代から40代の女性を中心に急激に増えているのが子宮内膜症です。昭和40年代と比較しても、患者数は3倍近くに増えているといわれます。
 その原因として考えられているのは、女性のライフスタイルの変化です。子宮内膜症は、月経が始まってから年数がたつほど増加します。10代で内膜症になる人はごくわずかですが、20代、30代と年齢が上がるほど増加し、40代でピークを迎えます。また、月経周期が短く、月経の期間が長い人の方が内膜症になりやすいといわれています。
 これは、子宮内膜症が女性ホルモン(エストロゲン)と密接な関係にあるからなのです。子宮の内側をおおう内膜は、受精卵が着床するところ、いわば赤ちゃんが育つベッドです。妊娠に備えて内膜は増殖し、受精卵の着床がなければまたはがれ落ちるということを周期的に繰り返しています。これをコントロールしているのが、エストロゲンなどの女性ホルモンです。そして、はがれ落ちた組織や血液は腟から外に排泄されます。これが、月経です。
 子宮内膜症は、この子宮内膜とよく似た組織が子宮以外の場所でエストロゲンの働きによって増殖と剥離を繰り返す病気です。
 したがって、エストロゲンの分泌が停止する閉経期以後になると、子宮内膜症も急激に減少するのです。

 そして、子宮内膜症との関係で大事なのが妊娠・授乳期です。妊娠・授乳期には月経も停止します。この間は、エストロゲンの働きも抑えられています。かつては、日本の女性も若くして結婚し、たくさんの子どもを生んでいました。その当時は、妊娠・授乳による月経の停止によって、自然に子宮内膜症が治ったり、また予防する結果にもなっていたと考えられます。
 しかし、今は初経を迎える年齢も早くなり、閉経の時期は遅くなっています。それだけ、エストロゲンが分泌される期間が長くなっているのです。さらに働く女性が増えて、結婚年齢も出産年齢も遅くなっています。出産回数も大幅に減少し、子どもをつくらない女性も増えてきました。その結果、妊娠・授乳による「自然治療」の機会が減少し、子宮内膜症が増えてきたと考えられるのです。
 そういう意味で、子宮内膜症は現代病のひとつ、女性のライフスタイルの変化によって増加している病気といえるのです。

病気のメカニズム -なぜ子宮内膜症になるのでしょう-

子宮内膜は、子宮の内側にあるビロードのように軟らかい組織です。子宮内膜症では、この子宮内膜とよく似た組織が、卵巣やおなかの中など子宮以外のあちこちの場所で、エストロゲンの作用によって増殖と剥離を繰り返します。
 ふつう、はがれ落ちた内膜や血液は月経となって腟から排泄されます。しかし、子宮の外で増殖し、はがれ落ちた内膜や血液には出口がありません。そのために、小さな血液の固まりとなり、やがて大きく成長したり、周囲と癒着してさまざまな障害を起こすようになるのです。
 では、なぜ子宮の中にあるべき内膜の組織が子宮の外にできるのでしょうか。
 はっきりした原因はよくわかっていませんが、月経血の逆流と関係しているのではないかという説もあります。月経血は、本来腟から排泄されるのですが、その一部が卵管を通 ってお腹の中に逆流することがあります(図1)。


図1(子宮内膜症好発部位)

 卵管は、卵巣から飛び出した卵子が子宮に向かって移動し、精子と出会い子宮に移動していく道です。健康な人でも、月経血の逆流はしばしば起きているようなのですが、子宮内膜症の人では、卵管を通っておなかの中に落ちた子宮内膜の組織が、卵巣や腹膜などにくっつき、そのまま根付いてしまうらしいのです。
 ほかにも腹膜になるはずの組織が子宮内膜と似た組織に変化して子宮内膜症になるなどいろいろな説があります。また、高学歴の人やストレスの多い人などが子宮内膜症になりやすいというデータもあります。しかし、子宮内膜症がなぜ起こるのか、本当のところは、わかっていません。ですから、妊娠出産経験の多い人に子宮内膜症が少ないというデータがあるだけで、はっきりした予防法はないのが現状です。

症状 -こんな症状が現れます。-

 全く症状のない人から、「急性腹症」といって開腹手術が必要な激しい腹痛が起こる人まで症状はさまざまです。しかし、一番わかりやすいのは、月経痛です。それも、痛い時もあれば楽な時もある、というのではなく、だんだん痛みがひどくなるのが特徴です。
 下腹部の痛みや腰痛がひどくなり、それまで飲んでいた鎮痛薬が効かなくなった、あるいは月経時の出血が多くなり、今までのナプキンでは間に合わなくなったという人もいます。
 月経期間中に排便時の痛みや下痢があったり、頭痛や吐き気、嘔吐、発熱などが起こることもあります。こうした症状が月経時以外に起こるようになったら、ある程度内膜症が進んでいる可能性が高くなります。また、性交痛にも悩んでいる人も少なくありません。子宮のすぐ後ろにある直腸との間のくぼみ(ダグラス窩)や子宮を支える靱帯などに病巣があると、性交時に痛みが出ることが多いのです。
 こうした症状は、子宮内膜症の病巣の位置や進行の程度を知る手がかりにもなりますから、恥ずかしがらないできちんと医師に伝えましょう。

予後 -放置するとこんなことになります-

 子宮内膜症は、時間の経過とともに進んで いきます。ふつう、四期に分けられています。

第一期

 子宮内膜症の組織が卵巣や腹膜など子宮以外の部位に点々と散らばり、成長を始めた段階です。月経に一致して剥離した組織や血液がその部位にたまり、小さい血の固まり(血腫)を作ります。これは、青黒く見えるのでブルーベリースポットとも呼ばれます。
 まだ自覚症状はほとんどなく、手術や検査で偶然発見されるケースがほとんどです。

第二期

 増殖と剥離を繰り返すうちに、点状だった病巣は大きく広がっていきます。このころになると、月経時の出血が増えたり、月経痛が多少強くなってきます。理想的には、この段階で治療を受けることが望まれます。

第三期

 大きく広がった子宮内膜症の組織が固まり、周囲の卵巣や卵管、腹膜、靱帯などがくっついて癒着するようになります。卵巣の中で子宮内膜症が増殖した場合には、卵巣の内部がチョコレート色の血液でいっぱいになります。これを「チョコレートのう腫」といいます。この頃になると、性交痛も現れ、月経痛がひどくなって寝込むほどの状態になる人もいます。また、稀にチョコレートのう腫が破れて中身がおなかの中に漏れてくることがあります。こうなると耐えがたい痛みが起こり、緊急手術が必要になることがあります。

第四期

 癒着が、卵管や卵巣、子宮だけではなく、膀胱や直腸、小腸など骨盤の中にある臓器全体に広がっていきます。さらに、骨盤内外を問わず、肺などに発生することもあります。一つ一つの臓器を見分けることが難しいほど癒着がひどいこともあります。骨盤の中にある臓器が冷凍されたように一塊になってガチガチになるというので、「凍結骨盤」と呼ばれることもあります。こうなると、月経時以外でも腰痛や下腹部の痛みがひどくなり、日常の生活にも支障をきたすようになります。
不妊症の原因に
 月経痛がひどくてつらいというのも、子宮内膜症の大きな症状です。しかし、もうひとつの問題は、この病気が不妊症の大きな原因であるということです。原因不明の不妊症のうち、半分は子宮内膜症によるものとさえいわれています。不妊症の診察にいって、子宮内膜症が発見されることも多いのです。
 内膜症によって卵巣や卵管が癒着し、卵子が通れなくなれば、不妊症になるのも理解できます。ところが、卵管も通り、排卵もあるのに妊娠しないこともあります。こうしたことから、子宮内膜症の存在自体が、妊娠には不利なのではないかと言われています。
 しかし、子宮内膜症を治療すれば、かなりの人が妊娠できます。また、早い時期に治療したほうが妊娠も容易なので、思い当たる節があればすぐに産婦人科を受診しましょう。

B.開腹手術

 腹部を開腹して、腹腔鏡を用いた手術と同じ処置をします。そのほか、詰まった卵管を治す卵管形成術なども行われます。

検査 -こんな検査で診断します-

 基本的には、症状と内診(医師が直接腟から指を入れ、子宮や骨盤内の臓器の状態などをみること)、血液検査、超音波検査、CT(コンピューター断層撮影)MRI(磁気共鳴画像診断装置)などの検査で診断がつきます。
 病巣の位置や進行の程度などをはっきり確かめるためには、腹腔鏡検査が行われることもあります。これは、腹部に小さな切開を入れ、ここから細い管を入れて内部の病巣を肉眼で観察する方法です。

治療 -こんな治療法があります-

 病気の進行の程度や症状、将来子どもが欲しいかどうかなどによって、治療法が選択されます。

ホルモン療法

 子宮内膜症は、エストロゲンという女性ホルモンの影響で起こる病気です。そこで、何らかの方法でエストロゲンの働きを抑えてしまうのがホルモン療法です。
 これにも次のような方法があります。

A・偽妊娠療法

 外からエストロゲンのほかにプロゲステロン(黄体ホルモン=女性ホルモンのひとつ)を投与して、妊娠中と同じような状態にする方法です。中用量や低用量のピルも使われますが、低用量ピルは避妊を目的とした薬なので、日本では健康保険が使えません。

B.偽閉経療法

 ダナゾールは、エストロゲンの働きを抑える飲み薬です。卵巣の働きを抑えて月経を止め、子宮内膜症を小さくさせたり、直接子宮内膜症の組織を小さくするなどの作用があります。症状も軽快しますが、吐き気や体重増加、にきびが増えるなどの副作用がみられることがあります。

C.偽閉経療法

 卵巣からのエストロゲンの分泌は、脳で分泌される卵胞刺激ホルモンによってコントロールされています。そこで、注射や点鼻薬で卵胞刺激ホルモンの分泌を抑え、エストロゲンを出なくするのが偽閉経療法です。閉経と同じ状態になるので、子宮内膜症も小さくなります。
 ただ、閉経と同じような状態にするため、ある程度更年期障害と似た症状が出ることは避けられません。そこで、ふつうは4~6カ月くらいで中止します。
 ホルモン療法は、体にメスを入れることなく薬で治療できるのが長所です。ただ、更年期障害と似た症状をはじめとする副作用の心配もあるので長期には続けられません。治療をやめると遠からず再発することになります。さらにホルモン療法では排卵が抑えられるので、妊娠を希望する場合は治療を中断しなければなりません。

施術

 ホルモン療法ではかばかしい効果がない場合は、手術という方法もあります。おなかを開ける開腹手術と腹腔鏡による手術と2つの方法があります。
手術
 ホルモン療法ではかばかしい効果がない場合は、手術という方法もあります。おなかを開ける開腹手術と腹腔鏡による手術と2つの方法があります。

A.腹腔鏡による手術

 手術といっても、これは腹部に2~3カ所小さな孔を開けるだけですみます。ここから、腹腔鏡という長い管を差し込み、病巣部の処置をします。たとえば初期のブルーベリースポットをレーザーや電気メスで焼いたり、癒着した臓器をはがします。
 また、卵巣のチョコレートのう腫も、卵巣を残してのう腫だけを摘出することが可能になっています。
 手術に比べて体の負担が少なく、回復が早いことが利点です。ただ、ふつうの手術でも腹腔鏡手術でも、卵巣や子宮を残せば再発の危険性は残されます。
トピックス
 不妊症で、どのような治療でも妊娠しない場合は、卵子と精子を体外で受精させて受精卵を培養し、子宮に戻す治療もよく行われています。これを体外受精・胚移植と呼んでいます。