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漢方薬に向いている人、向いている病気

漢方薬って何?

 漢方薬は、薬草などからつくった生薬(しょうやく)をいくつか組み合わせた、自然素材の薬です。もともとは古代中国で始まった薬ですが、日本人も昔から使ってきました。お正月に飲むおとそは、屠蘇延命散(とそえんめいさん)という薬をミリンや酒で溶いたものですし、風邪薬の葛根湯(かっこんとう)はいまも市販されていて、よく使われています。
漢方薬の成分の多くは、植物の根や茎、葉などからつくられています(一部に鉱物や動物素材もあります)。化学合成が主流の現代の薬(西洋薬)とくらべると、漢方薬は一般に効き目がおだやかです。それだけ副作用が少なく、からだにも優しい薬だといえます(副作用がないわけではありません)。

 漢方薬の特徴は、女性器官の働きを改善したり、ホルモンや自律神経のバランスを整えたり、血液の流れをよくしたりするのに、適していることです。さまざまな成分の相乗作用によって、からだ全体の調子を整え、自己治癒力を高めるのが、漢方薬だといえるでしょう。
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 「立てば芍薬(しゃくやく)、座れば牡丹(ぼたん)、歩く姿は百合(ゆり)の花」…昔の人は、美人を花にたとえて、そんなふうに表現しました。じつはこの芍薬、牡丹、百合は、いずれも冷え性や月経不順などに使われた婦人病の薬です。健康こそ美人の基本…昔の人も、そう考えていたのでしょう。芍薬や牡丹は、いまでも漢方薬によく使われています(日本製薬工業協会『くすりの常識Q&A50』より)。

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漢方薬が向いている女性の病気

 漢方薬は体質に合うと、とてもよく効くことがあります。あなたは、どんな症状で悩んでいますか。次のような症状の人で、西洋薬ではなかなか改善されない場合には、漢方薬を選択肢に入れてみましょう。

冷え性や肩こり

日本女性によくみられる症状ですが、西洋医学では病気とみなされていないため、これといった治療法がありません。こうした症状には漢方薬によって、体温を調節する自律神経の働きを高めたり、血流をよくする方法が向いています。ただし糖尿病による冷え性のように、原因がはっきりしている場合は、その治療を優先にする必要があります。

イライラ、不安感、動悸、のぼせ、頭痛・頭重などの不定愁訴

病気というほどではなくても、本人にはとても不快な症状で、日常生活にも支障をきたすことがあります。症状がいくつか重なることが多いため、西洋薬だけでは治療がむずかしい面もあります。
更年期の女性の場合には、ホルモン補充療法という治療法もあります。ただし乳がんなどのリスクがあって、ホルモン補充療法のできない人もいます。また若い世代でも、ストレスやダイエットなどによってホルモンバランスがくずれ、同様の症状が起こることは少なくありません。
 こうした不定愁訴では、漢方薬でホルモン分泌や自律神経などのバランスを改善すると、症状が軽減されるケースがあります。

月経に伴う症状

月経前症候群(PMS)や月経不順、月経痛などの症状にも、漢方薬が効果を発揮することがあります。
 月経前症候群は、月経の始まる1週間くらい前にイライラや頭痛、下腹部痛、だるさ、吐き気などの症状がみられるものです。原因は人によってさまざまですが、漢方薬でホルモンバランスを整えると、症状が改善されることがあります。
 月経不順の場合も、不正出血などの気になる症状がなければ、漢方薬でホルモンバランスを整えたり、血液の流れをよくするなどの改善法があります。
 月経痛では、出産経験のない若い女性の場合、子宮の筋肉が硬かったり、子宮頚部が狭いなどの理由から起こることが少なくありません。こうした機能性の症状には、漢方薬で血流を改善する方法が向いています。ただし漢方薬にはあまり速効性はないので、痛みをすぐに抑えたい場合には一般の鎮痛薬のほうが適しています。
 また20歳代後半からの強い月経痛は、子宮筋腫や子宮内膜症などが原因となっている可能性もあります。この場合にも漢方薬で改善する方法もありますが、症状の程度などにもよるので、医師に相談してください。

不妊症

不妊症の治療にも、漢方薬を使うケースが増えています。不妊症のなかには検査を受けても原因のはっきりしないものや、子宮や黄体ホルモンの機能が不十分なために起こるものがあります。こうしたタイプの不妊症では、漢方薬によって子宮などの機能が改善されると、妊娠の可能性も高くなります。
 また習慣性の流産の場合も、ホルモン薬に近い働きをする漢方薬が効果をみせることがあります。

その他

次のような症状にも、漢方薬がよく使われます。
・ストレス性の自律神経失調症や軽いうつ状態、不眠症。
・便秘(大腸の機能低下や、手術後の腸の癒着などによるもの)。
・腰痛(疲労や血流の悪化によるもの)。
・妊娠中のトラブル(つわり、便秘、妊娠中毒症など)。
・慢性的な疲労、病後や出産後の体力の回復。
・お年寄りに多い複数の軽い症状が重なった状態。
 また頭痛などで同じ鎮痛薬を使用していて効きにくくなったケースでも、漢方薬に代えると効果が出ることがあります。

煎じ薬とエキス剤の違い

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 現在よく使われている漢方薬には、大きくわけると、煎じ薬とエキス剤(医療用漢方製剤)とがあります。煎じ薬は昔からあるタイプで、乾燥させた薬草などを細かくしたものを、お湯で煮出して使います。エキス剤は成分を濃縮して、顆粒剤や錠剤などにしたものです。

 一般の病院で使われている漢方薬の大半は、エキス剤です。エキス剤のメリットは、使いやすいこと(飲みやすく、持ち運びにも便利)と、健康保険が適用されることです。

 漢方の専門病院では、煎じ薬も使われています。煎じ薬のメリットは、体質や症状に応じて成分の配合を変えたり、分量を加減しやすいことです。ただ患者(あなた)自身が煮出して使うので、時間がかかることと、外出時などに使いにくい面があります。また薬が湿気ないように、保存にも気をつける必要があります。

 煎じ薬とエキス剤のどちらがいいかは、人によって、また症状によって違いがあります。漢方薬に興味がある人は、医師に相談したうえで、使いやすいエキス剤から試してみてはどうでしょうか。
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 お湯を沸かすヤカンは、もともと煎じ薬を煮出す道具でした。ヤカンを漢字では「薬缶」と書くことからも、それがわかります。でも煎じ薬には香りの強い成分もあるので、ヤカンに香りが移ってしまうこともあります。煎じ薬を煮出すときには、鍋を使ったほうが、あとで洗いやすいので便利です。アルミ鍋はアルミニウムが溶け出すこともあるので、その他の鍋がいいでしょう。

 エキス剤はそのままで飲めますが、顆粒などはお湯にもよく溶けます。溶かして飲むと、より吸収がよくなります。ただお湯に溶かすと香りも強く感じるので、それが苦手な人はエキス剤のままで飲むようにします。

漢方薬を上手に使うには

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 漢方薬の多くは、効果が少しずつあらわれます。薬の種類や症状によって違いますが、効果を実感するには最低でも2~3週間、できれば1~2ヵ月くらいは様子をみる必要があります。あせらず、しばらく我慢強く付き合ってみることが大切です。

 また漢方薬は効き目がおだやかなので、そのぶん食べ物や飲み物の影響を受けやすい面もあります。漢方薬を飲んだあと30分くらいは、食べ物や飲み物をとらないほうが効き目もよくなります。

 煎じ薬や、エキス剤をお湯に溶かしたものは、かなり香りもします。この香りには、ハーブのようなアロマテラピー(芳香療法)の効果もあります。もし香りが嫌いでなければ、湯気をゆっくり吸い込むのもいいでしょう(ただし強烈な香りのものもあるので、要注意)。

 漢方薬の効果を高めるには、日常生活にも注意が必要です。とくに「からだを冷やさないこと」と「ストレスをためないこと」が大切。どちらも、漢方薬の働きをさまたげるからです。

 からだを冷やすと、血液の流れや自律神経の働きが悪化し、月経異常などを起こしやすくなります。とくに夏はエアコンによる冷えには十分に注意し、オフィスや映画館などでの対策のほか、自宅でもお風呂上りや睡眠時にエアコンに当たりすぎないようにしましょう。

 ストレスも、ホルモンや自律神経のバランスを乱し、女性器官の働きを悪化させたり、不定愁訴の原因ともなります。人間関係や仕事上のストレスだけでなく、夜更かしやアルコールの飲みすぎ、無理なダイエットなども、からだに大きなストレスを与えるので注意してください。

漢方薬にも副作用はある

 漢方薬は副作用がなくて安全…そんなふうに思い込んでいませんか。ところが漢方薬にも、いろいろな副作用がみられます。

 たとえば、慢性肝炎などの治療に使われる小柴胡湯(しょうさいことう)は、一部の人にですが、黄疸や間質性肺炎などの重い副作用を起こすことがあります。小柴胡湯を使っていて発熱や咳などがみられたら、すぐに医師に告げるようにしてください。

 風邪薬の葛根湯は、自律神経の働きをよくし、免疫力を高める効果があります。その一方で胃の具合を悪くしたり、食欲をなくす人がいます。お年寄りのなかには、動悸が生じる人もいます。それは葛根湯のなかに麻黄(まおう)という、鎮痛薬と同じ作用をもつ生薬が入っているからです。また附子(ぶし)という生薬の入っている漢方薬も、胃腸障害を起こしやすいものの一つです。胃腸の弱い人は医師に相談し、別の薬に変えてもらうか、胃腸薬と併用するなどの方法をとる必要があります。

 月経痛の治療には芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)がよく使われていますが、一般に甘草のふくまれる漢方薬では、人によってむくみが出ることがあります。

 妊娠中に便秘になったとき、漢方の便秘薬を使うことがあります。大黄(だいおう)をふくむ便秘薬には多くの種類がありますが、なかに刺激性の強いものがあり、下痢や腹痛を起こすことがあります。

 最近はダイエット目的などで、インターネットを通じて漢方薬を買う人も増えています。そのなかには日本で禁止されている危険な成分が含まれていることがあります。成分のわからない漢方薬は副作用の危険性も高いので、安易に使わないようにしましょう。

 一般に漢方薬であっても、効き目の強い生薬をふくむものがあります。また体質的に合わない場合もあります。漢方薬は安全と思い込まず、もし湿疹や吐き気、動悸などの不快な症状がみられたときは、すぐに医師に相談することが大切です。
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 漢方の医学では、患者の体質を「実(じつ)」と「虚(きょ)」にわけて診断します。「実」というのは体力があって、肌色もよく、胃腸の丈夫なタイプです。「虚」は反対に体力がなく、血色が悪く、胃腸の弱いタイプです。同じように風邪をひいた場合でも、実の人と虚の人では薬が違うのです。

 たとえば風邪薬の葛根湯は本来、実のタイプ向けの薬とされ、胃腸の弱い虚のタイプには向いていません。胃腸障害を起こすのも、たいていは虚のタイプの人なのです。

 本格的な漢方では、「実・虚」だけでなく、さらに細かく体質や状態を「陰・陽」「気・血・水」などに分類して、薬の種類や成分量などを使い分けます。ここでは詳細にはふれませんが、薬によっては自分に合わないものもあるので、自己流の使い方はしないようにしましょう。

主な症状と代表的な漢方薬

 漢方薬は、同じ病気でも体質や症状の程度などによって、薬の種類が変わります。ここでは一つの目安として、女性に多い症状と代表的な漢方薬を紹介します。実際に使用するときは、医師の診断を受けてからにしてください。

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